中国ではスマホ決済が当たり前の時代に、どうして日本は現金利用比率が高いのか。

個人的にはほとんどの支払いをクレカで済ませるのですが、まだまだ日本全体で見た時の現金利用比率は高いと聞きます。

特段新しいネタではないものの、頭の整理がてら各種ニュース等の内容を引用した上で、私見をまとめたメモになります。

 

☆クレジットカード等の浸透度について

日本人のクレジットカード、デビットカード電子マネーなどの平均保有枚数は7.7枚で、アメリカ人の4.1枚を上回る(2015年、BIS傘下の決済・市場インフラ委員会(CPMI)参照の日銀レポート「BIS 決済統計からみた日本のリテール・ 大口資金決済システムの特徴」より)。 

日本ユニシスのレポートによれば、2014 年の日本での個人消費支出に占めるカード支払い比率は17%で、韓国73%、カナダ68%、オーストラリア63%、中国55%、アメリカ41%。

つまり、クレカはたくさん持っているものの、あまり使われてないという感じ。

 

☆日本における現金流通率について

日本の現金流通高のGDP比は19.4%で、ユーロ圏10.6%、アメリカ7.9%、イギリス3.7%と比べ突出して大きい。

北欧のスウェーデンノルウェーデンマークはいずれもGDPに対する現金の使用比率が5%以下。特にスウェーデンは1.7%と2%以下(全て2015年、前述日銀レポートより)。

※日本を「現金大国」にしている要因の一つは「タンス預金」だという日銀の指摘。

 

☆各国のキャッシュレス化に向けた取り組み

韓国;2017年4月、消費者が現金で買い物をした際のおつりを、直接その人のプリペイド、またはモバイルカードに入金し、つり銭を出さないようにする実験。

インド;現金社会である同国では、現金そのものが不正蓄財や脱税の温床になっていた。2016年11月にブラックマネー対策として一番高額な1000ルピー札(日本円で約1700円)と2番目に高額な500ルピー札を法定通貨として無効化。国内流通量の80%に相当していた高額紙幣が使えなくなったことでパニック化したものの、電子決済への流れができた。

スウェーデン;「現金お断り」のショップや飲食店が増え、交通機関はほぼカードオンリー、現金では鉄道やバスにも乗れない。銀行はもはや現金を置かないキャッシュレス店舗が大半を占める。クレジットカードや、「Swish(スウィッシュ)」などのスマホのモバイル決済アプリ。「Swish」はスウェーデンの6つの主要銀行が共同開発した決済システムで、携帯電話の番号と個人認証だけで自分の銀行口座から直接買い物や飲食などの支払いができるし、口座間の送金も簡単にできる。

 

発展途上国では、現金決済コストが高いため、よりキャッシュレスが進みやすい。また治安の良さも現金保持のコストを下げる。日本は相対的に狭い国土に豊富なATM網。同様のことは中国、インドでは不可能。 広大なアメリカでは配送モデルが日本と異なるのと同様。

 

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出所:ハーバードビジネスレビュー「The Countries That Would Profit Most from a Cashless World」

 

☆現金比率を引き下げたときのメリット

●資金決済の効率化。現金の準備が不要、保有等も不要。

●少額コイン製造の費用が下がる。国にとってメリット。

●電子データ活用。ミス低減やデータ活用。

●セキュリティ向上の恩恵。現金なければ強盗もされない。データ履歴が残るため、マネロン対応にも。

※現時点では、偽札よりもカード偽造等による犯罪被害の方が大きい。

ドイツ銀行のレポートによれば、カード詐欺による損害と流通する偽札の金額の割合は10:1で、犯罪防止効果についてはまだ議論の余地。

エストニアのように全て自動化されてしまえば、会計士や税理士という職業がなくなる。

 

☆現金比率を引き下げるのはクレジットカードに限らない。

従来の振込、小切手に加えて、モバイル決済も増加。

特に中国では、クレカではなくアリペイ、ウィーチャットペイに。クレカの平均保有枚数も減少。

米国ではクレカ、デビットの利用率が高いものの、英国ではデビットが多い。

モバイル決済では即時引き落としを前提とすれば、クレジットカードのように回収リスクを想定せずに済むため、より低い加盟店手数料でサービス提供が可能。

 

☆あえて、クレジットカードにこだわるとすれば…。

❶海外からの旅行者増、オリンピックに向けてさらにキャッシュレス化は進展

日本人でも海外旅行に行く人はクレカの便利さを体感する。ただし、デビットが代わりにに普及する可能性もある。日本の国民性に合うのはどちらなのか。当座は両にらみ。

 

❷場所を限定してキャッシュレス化を進める

たとえば、少額決済の多いコンビニでのポイント付与をカード側に寄せる。LAWSONでは75%以上が現金払い(2017年5月決算発表より)。LAWSONは今銀行化に向けて準備中。タクシー等ではクレカのみならず、予約配送アプリで支払いまで完了。

 

❸金融機関とフィンテック企業によるオープンイノベーション

ユーザを持つ各チャネルが決済手段を提供。クレジットカードと提携。少額決済、中国のQRコード決済と近い領域。

本人確認なしに割り勘アプリ(収納代行)…paymo。

SNSによる支払い(資金移動業)…LINE pay。

本人確認なしにアプリ決済(前払式支払手段)…kyash。

※アリペイが日本本格参入するということで、日本企業も本気になりつつある?

 

❹クレジットカード会社としての試みは、加盟店追加と領域拡大

業種ごとに加盟店手数料は決まっているので、クレジットカード会社が出来ることの一丁目一番地。たとえば、少し前からクラウドファンディングや保険にクレカが使えるようになっているが、そういう領域を地道に増やして行くということ。

 

❺日本固有かもしれないが、特徴的なポイント経済圏の発展として

Tポイントやビックカメラポイントなど、各種企業が発行するポイント。ポイント一元化サービス等もあるため、これらが擬似的通貨としてさらなる存在感を持つ可能性あり。クレカポイントも含め、企業ポイントを前提とした購入活動の延長で、デビットカードやクレジットカードの利用拡大へとつながる方向はないか。

 

ビッグデータ活用による収益源の拡大

ビックデータ活用が盛んになれば、データ保有企業にとって収益源が増えるため、顧客還元等のキャッシュレス化を後押しするプロモーションも可能か。

ケースは少し違うけれども、米国では日本と異なりリボ払いが主流であり、クレジットカード会社は日本のクレジットカード会社と異なる収益モデルとなっている。毎回のフローに対しての加盟店手数料を引き下げても十分ペイするため、日本よりも相対的に低い加盟店手数料になっているとのこと。カード会社が仮に保有するビッグデータを収益化することに成功すれば、決済手数料の引き下げにつながり、加盟店側にとっての利用促進につながる可能性も。

 

Apple Payみたいな媒体が利用を活性化

カードの非保有が多くの枚数をもつ日本人にとってはポジティブに働く?カードを端末に取り込むだけで、アップルが収益を得られるのは見ていてもすごいと思う。カード会社のビジネスモデルは関係者が限定されていると思っていたため、そこに入ってくる余地があるんだなあと。

 

❽ビジネスのサブスクリプションモデル化による影響

ビジネスがサブスクリプションモデル化されるにあたり、都度払いの頻度が落ちるため現金決済は自動的に低下。定期的な支払の多くはクレジットカードあるいは銀行振込によることが多いため。

 

 ❾口座アグリゲーションサービスとの親和性

マネーフォワード等の口座アグリゲーションサービスを使うなら、なるべくクレカや振込等のキャッシュレス活動のほうが連携しやすい。家計簿を作るために敢えてクレカで払うというのもあり。

マネーフォワードを例に取れば、厚生年金やDC(確定拠出年金)ですら一元化できる。

 

(参考)

http://news.livedoor.com/article/detail/13045266/

https://newsphere.jp/national/20170513-1/

https://hbr.org/2016/05/the-countries-that-would-profit-most-from-a-cashless-world

https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/85.html

https://newspicks.com/news/2283727/

http://president.jp/articles/-/22449

https://mainichi.jp/articles/20170422/k00/00m/020/050000c

https://money-lifehack.com/diary/2300

http://www.meti.go.jp/press/2014/07/20140711002/201407110022.pdf

https://hajipion.com/2376.html

http://www.global.jcb/ja/press/news_file/file/20170217.pdf

https://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psrb170221.pdf